TSUKAI 公演評

江森盛夫(「シアターアーツ」2009年冬41号)

暗闇からダンボールを積んだ台車引き、目が赤く点滅しているイノシシを連れて安藤が出てくる。舞台にはダンボールが散乱している。舞台上手、下手に穴が開いていて神村、栩秋が占有している。安藤はダンボールから子供の服、靴、飾りなどを出して陳列する。「本日開店」という文字が背負った電光掲示板に点滅する。穴の二人は詩的決意表明をエンドレスに繰り返す。舞台に多量のダンボールが雪崩れ込む。あとは三人とダンボールの積んだり崩れたりの戦いだ。舞台裏から昭和日本に傾斜したメッセージ、「枯れすすき」の曲が鳴り響き、昭和の日本人の暮らしの映像が流れる。舞台裏から軍国ニホンの標語らしき「南方は今日も」を含むメッセージが聞こえてくる。資本主義の基本規格品のダンボールと戦前の記憶を宿す生身の身体の相克はスーパーアナクロニズムともいえそうな独特の奥行きの深い時空を創り出した。それはコントロールされた舞台進行とパフォーマーの錯乱との相克に重なる。ARICAの進境を示す舞台だった。