ネエアンタ

2013年2月28日〜3月3日 全4回公演

会場:森下スタジオCスタジオ

「踊らないダンスに興味がありますか?」
と問うた。
「ダンサーにとって、踊らないことで成立するダンスが、
最終的な目標なのではないかな。」と彼は答えた。
サミュエル・ベケットがテレビドラマとして書いた、
「ねえジョウ」という作品がある。それはこんな話だ。
くたびれた中年の男がひとり。しばらくするとどこからか女の声が聞こえる。
どうも、その男の惨めな半生を語っているらしい。
そして、その女は昔、男と関係があったようだ。
女の声は、男のみすぼらしい生活をしゃべり、男に振られ、
ついに海で自死した「緑の女」の顛末を語る。
男は、見えない死者である女の視線を感じ、声を聞き、
おびえと同時に奇妙な幸福感をたたえた表情を浮かべ、佇んでいる。
気が滅入る話だ。しかし、かつて見た映像において、ベケットが
男にいっさい言葉を語らせず、透明感のあるリズミカルな女の声によって
追い込まれる、男の身体と表情の情調は、確かに凄みがあった。
言葉のない男と、死者の女の物語。
気鬱なベケットに抗いつつ、滑稽であり、かつ凄みをも持った、
私たちの「言葉のない男」を探していた。
それが山崎広太だった。

演出 藤田康城

演出・テクスト構成:藤田康城
テクスト協力:倉石信乃
出演:山崎広太・安藤朋子
舞台監督:鈴木康郎
舞台監督助手:湯山千景
照明デザイン:岩品武顕
照明オペレーター:松崎容士
音響デザイン:田中裕一
音響オペレーター:櫻井満希夫
衣装デザイン:安東陽子
小道具製作 渡部直也
宣伝美術:須山悠里
広報協力:茂木夏子 久保風竹
協力:前田圭蔵・高橋永二郎・猿山修・光門映恵・原田美穂
制作:須知聡子
写真撮影:宮内勝
記録映像:たきしまひろよし