恋は闇/LOVE IS BLIND
会場:イワト劇場
十字架状の細い板を挟んで、同じものが二組ずつ存在する鏡像的な風景が広がっている。
室内なのか、屋外なのか、板によってひと続きになったバルコニーのようにも見える。
その反復強迫的な風景は、どこか不穏で倒錯した印象を与えている。
やがてそこに一人の女が現れる。女は奇妙にも中空に少し浮いたように不安定な足取りで板の上を歩いてくる。女は口が不自由のようで話す言葉は良く聞き取れない。それを天井から降りてきたオウムが代弁することになる。
女の足と口に代わり、体を支える奇妙な仕掛けと言葉を話すオウムを、身体と声が借り受けることで、ようやく自身の感情を切れ切れに語ることができる。
近松門左衛門『曾根崎心中』の引用を含むテクストが描く狂おしい恋の情念は、奇妙な女の身振りと声音によって不毛な恋愛を機械的・断片的に模倣するが、ほとんど応答のあてのない孤独な営みだ。
バラバラになりまともに動かなくなってなお、他人を求めるからだのうごめきと、呼びつづけ叫び続ける欲望の声。これは「恋」の不易と流行、原形と変化形を見さだめ、
他人へと働きかける困難な法をさぐるための劇である。
演出・構成:藤田康城
テクスト・コンセプト:倉石信乃
出演:安藤朋子
作曲・演奏:イトケン・猿山修・高橋永二郎
機械装置:高橋永二郎
舞台監督:鈴木康郎
舞台監督助手:湯山千景
照明:岩品武顕
照明オペレーション:松崎容士
音響:田中裕一(サウンドウェッジ)
音響オペレーション:楠瀬千花(サウンドウェッジ)
衣装:安東陽子
衣装製作:渡部直也
靴下オブジェ:勝本みつる
宣伝美術:須山悠里
協力:茂木夏子
制作:須知聡子 前田圭蔵
写真:宮内勝
公演評
「徐々に揺れが収まる中で」