「ミメーシス」公演を終えて

ARICAの創立から20年目の公演となった『ミメーシス』は、一昨日に千秋楽を迎える事が出来ました。多くの方に足を運んで頂き、感謝申し上げます。

 ARICAは創立当時から、空間と音を劇の核となるフレームと捉え、その中で生起し変化し続ける身体と言葉の緊張関係を見据えてきました。そして今回の『ミメーシス』では、強靭な身体性を持ったダンサーの川口隆夫氏を迎え、ARICAの安藤朋子と彼が正対し組み合ったことで、身体表現の新たな可能性が開かれる思いを感じています。

 ダンサーは振付が行為の大切な動因です。しかしアクターは振付では動くことは出来ません。テクストのイメージやモノを扱う具体的な行為を一つ一つ積み上げていくことで、やっとそれらを内実化し動けるようになるのです。稽古を重ねる中で、真逆とも思える行為のプロセスの違いに戸惑いながらも、しかしお互いがそれぞれの方法で充実した身体を獲得したときに、二人が共鳴する響きはとても豊かだったと思います。

 ARICAの活動を始めてから、いつの間にか20年という時間が流れましたが、私たちはいつも、私たちにとって新鮮な感覚、何か新しいことを得たい、感じたいとの思いに突き動かされて、公演を重ねてきました。今回の経験を踏まえ、これからも精進してまいります。

 今後もぜひARICAにご注目ください。どうぞよろしくお願いいたします。

2021年12月                                          

ARICA演出 藤田康城